九州の食探求メディアKyushu Food Discovery Media

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LOCAL FOOD CONTENTS

「九州の味とともに」

守り伝えられてきた九州の郷土料理

春の味

とびんにゃ

子どもから大人にまで
親しまれる
つまみに欠かせない
塩ゆでで食べる貝

とびんにゃ

『とびんにゃ』の正式名称は『マガキガイ』。太平洋の熱帯・亜熱帯地区に生息する、長さ5cmほどの褐色の巻貝だ。奄美大島の方言で『にゃ』は“貝”のこと。『とびんにゃ』は“飛ぶ貝”を意味する。海中で、三日月型のフタ(奄美ではツメと呼ばれている)で海底を蹴るようにして移動する様子が、飛んでいるように見えることからその名がついた。奄美大島南部では『ティラダ』と呼ばれ、奄美群島の中でも地域ごとに呼び名が微妙に異なる。冬の終わりから春の初めが、一番大きくなる旬の季節だ。

昔からの食べ方は塩ゆでで、砂をはかせた『とびんにゃ』を海水でゆでるという食べ方。海水でゆでるとツメが外に飛び出し、殻から身を取り出しやすくなる。普通の水でゆでるとツメが殻の奥にひっこんでしまい食べにくくなってしまうのだそうだ。先端にワタがついた身を食べると、弾力があり歯応えのある食感と甘みをも感じる深い旨味を楽しめる。焼酎のつまみに最高の味わいだ。塩ゆで以外では、味噌汁に入れたり、取り出した身を味噌漬けにして食べることもある。

奄美大島では販売されているが、潮干狩りのような感覚で自ら獲った『とびんにゃ』が食卓に並ぶ家も多いようだ。子どもから大人まで奄美に暮らす方には欠かせない貝だ。