九州の食探求メディアKyushu Food Discovery Media

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LOCAL FOOD CONTENTS

「九州の味とともに」

守り伝えられてきた九州の郷土料理

春の味

ひきとおし

壱州豆腐と
そうめんも添えられ
甘めの味で
客をもてなす鶏肉鍋

ひきとおし

博多港からは高速船で約1時間。壱岐島は、古事記には『天比登都柱』、魏志倭人伝には『一支国』の名前で登場し、中国大陸や朝鮮半島と日本本土を結ぶ海の拠点として栄えた島。『ひきとおし』は、この壱岐に伝わる郷土料理だ。

かつて、農家はどこも鶏を飼っており、客人が来ると、家の奥の座敷に通し、鶏をさばいて鶏を使った鍋料理を作ってもてなした。壱州弁(壱岐の古い方言)で、客を奥の座敷に通すことを“ひきとおす”という。『ひきとおし』の呼び名は、“ひきとおしてふるまった料理”に由来しているのだ。

さばいた鶏のガラからスープを作り、醤油や砂糖などで味付けする。このスープに鶏肉、ゴボウや白菜などの野菜類を入れて煮込んでいただく。元々、畑を走り回っていた地鶏を使うので、肉に歯応えのあるところが特徴だ。また、具材として、壱岐に伝わる大きくて固めの『壱州豆腐』、あらかじめ硬めにゆでておくそうめんも欠かせない。壱岐で好まれるのは甘めのスープだが、味付けは千差万別だ。〆は雑炊が旨い。

今も、人が集まる時によく食べられている『ひきとおし』。人々の生活に密着しており、『ひきとおし』を囲んで語り合う、『ひきとおし寄り合い』という言葉もあるほどだ。