九州の食探求メディアKyushu Food Discovery Media

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LOCAL FOOD CONTENTS

「九州の味とともに」

守り伝えられてきた九州の郷土料理

春の味

長崎天ぷら

甘くてふんわり
やわらかな味付きの衣
つゆをつけずに、
そのまま食べる天ぷら

長崎天ぷら

よく知られる天ぷらは、野菜や魚などに小麦粉をまぶし、小麦粉を卵と水で溶いた衣をつけて油でカラリと揚げ、天つゆや塩でいただく料理。しかし、『長崎天ぷら』は、見た目も味わいも、長崎でしか見ることができない独特な天ぷらだ。

その特徴は、まず衣に味がついていること。小麦粉と卵と水の他に、砂糖、塩、醤油、酒などの調味料が衣に加えられる。江戸時代から砂糖文化があった長崎では、角煮、皿うどんなど味付けに砂糖を使う郷土料理が多い。衣に甘みがある『長崎天ぷら』もまさに長崎ならではの味だ。そして、通常の天ぷらが衣を作る時にさっくりと混ぜるのに対し、よく混ぜておくのも特徴の一つ。そのため、サクサクの食感ではなく、ふんわりやわらかとした食感を持つ。それは、“天ぷら”というよりも、“フリッター”に近い。

できあがった『長崎天ぷら』は、天つゆも塩もつけずにそのままいただく。甘めの衣と素材の旨味が一つになった味わいは、おかずにもおやつにもなりそう。揚げたても美味しいが冷めても美味しく、家庭では、弁当のおかずとしても食べられていたようだ。
ポルトガルから伝来し、長崎ならではの形になったと言われる『長崎天ぷら』。ポルトガル、オランダ、中国の料理をベースに生まれた『卓袱料理』の一品になることも多い。

天ぷらとポルトガル語

『天ぷら』はポルトガルから伝わったと言われている。名前もポルトガル語に由来すると考えられており、幾つかの説がある。

temperar(テンペラール)/味付けする、調理する、の意味。安土桃山時代、来日したポルトガル人やスペイン人は衣がついたものを『テンペラ』と呼んでいたとも言われている

Tempora(テンポラ)/キリスト教用語で天上の日を表し、この日には精進料理として魚を揚げて食べる習慣があった

卓袱料理(しっぽくりょうり)

鎖国時代、海外と交易のあった長崎で生まれた。オランダ、ポルトガル、中国の料理をベースにしながら和風にアレンジした料理で、朱塗りの円卓を数人で囲んでいただく。

『お鰭(ひれ)』と呼ばれる鯛の吸い物から始まり、その後は大皿に盛られた料理を直箸(じかばし)で取り分けて食べるのがそのスタイル。『豚の角煮』をはじめ、『ハトシ』、『ヒカド』など独特な料理もある。その一品として、『長崎天ぷら』が出される場合も多い。