LOCAL FOOD CONTENTS
「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


薬味を合わせた
すし飯の上にのる
塩と甘酢で味付けした
『このしろ』
このしろ姿寿司
『このしろ』はニシン科で体長15~30cmの魚。キラキラと輝くウロコと黒い斑点模様が特徴。真水と海水が混ざる汽水域に生息するため、球磨川が流れ込む八代海では豊富に獲れる。ブリと同じように、大きさによって名前が変わる出世魚で、体長5cm程度までは『しんこ』、10cm前後のものは握り寿司のネタとしてもよく知られる『こはだ』、15cmを超えると『このしろ』と呼ばれる。ただ、ブリとは違い、出世する(大きくなる)にしたがって、値段が安くなるという特徴を持つ。
『このしろ姿寿司』は、棒状にしたすし飯の上に、背開きにした頭付きの『このしろ』をのせて押し固めた寿司だ。すし飯の上にのせる『このしろ』は、塩をした後、甘酢で締めたもので、ほどよい塩味と酸味が付いている。すし飯には、ゴマ、ショウガ、大葉などの薬味も混ぜ込まれている。すし飯の香りと甘味の中に広がる『このしろ』の旨味。醤油を付けなくても、そのまま美味しくいただける。また、酢で骨や頭もやわらかくなっているので、残さず食べられる。
『このしろ』は漢字で書くと『鮗』。その字の通り、脂がのる秋から冬が美味しい季節だが、八代海沿岸では、ほぼ1年中食べられている。この地域では、お正月、お祭り、お盆などには欠かせない、大切な郷土料理なのだ。