LOCAL FOOD CONTENTS
「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


姿からは
想像がつかない美味
干して炙って食べる
有明海の珍魚
わらすぼ
『わらすぼ』は日本では有明海にだけ棲息する珍しい魚。ハゼ科だが、細長い体型や表面がヌルヌルとしているところなどはウナギに似ている。しかし、退化して点でしかない目や尖った牙を持つ顔立ちはウナギとは異なりグロテスクだ。映画『エイリアン』に登場する宇宙生命体『エイリアン』に似ていると言われることもある。地元では『じんきち』や『すぼ』と呼ばれることも多い。
有明海沿岸で昔からよく知られている『わらすぼ』の食べ方は、内臓を取って干した後、炙って食べるというもの。エラから口にひもを通して干すので、『干しわらすぼ』はメザシのようにまっすぐではなく、頭のところが少し曲がっている。また、口が開いた状態になるので小さな牙も見え、干したものでもやはり顔は不気味だ。そのままだと骨がかたいので、木槌などで全体を叩いてやわらかくしてから炙る。香ばしい香りと濃縮された旨味、サクッとした軽い食感は見た目からは想像できない深い味わいで、焼酎がすすむ。
身体が大きくなる春から夏にかけてが『わらすぼ』の旬。この時期に獲って干物にしたものを一年中食べることができる。また、旬の時期に獲れた新鮮なものは刺身でもコリコリとした歯応えが美味しい。『わらすぼ』は、見た目と味わいのギャップもおもしろい有明海の珍味だ。