九州の食探求メディアKyushu Food Discovery Media

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LOCAL FOOD CONTENTS

「九州の味とともに」

守り伝えられてきた九州の郷土料理

夏の味

石焼

熱した石英斑岩(せきえいはんがん)の上で魚介類や野菜を焼く
漁師の食事から生まれた豪快な料理

石焼

九州と朝鮮半島の中間に位置する対馬の近海は、暖流と寒流がぶつかる好漁場。『石焼』は海の幸に恵まれた対馬市の漁村、美津島町根緒(ねお)の漁師たちが始めたと言われている。根緒付近の海岸に打ち上げられる石英斑岩という石を焚き火で熱し、その上で新鮮な魚介類を焼いて食べるという豪快な料理だ。やがて根緒地区の民宿が宿泊客への提供をはじめ、それが広まっていった。今では対馬を代表する郷土料理として知られている。

石鯛、ブリ、イカ、サザエ…食材は生でも食べられる新鮮な魚介類が中心。対馬特産の原木シイタケである『対馬しいたけ』が添えられていることも多い。石英斑岩は熱しても割れにくい特殊な石で、熱すると遠赤外線を発して、食材を外側は香ばしく、内部はふっくらと焼き上げる。適度に焼いた食材を、作り手特製のタレにつけて食べると、食材の旨味がまっすぐに伝わってくる。タレを食材にかけてから焼くという食べ方もあるようだ。

『石焼』の後は、対馬の郷土料理である『ろくべえ』や『対州(たいしゅう)そば』で締めたい。尚、石を熱するのに時間がかかるため、飲食店で食べる時は予約が必要だ。

対馬には石塀、石屋根倉庫、硯、砥石(といし)、特産品のひとつである『たたきイカ』など、石にまつわる文化が色濃く残っている。『石焼』は対馬の豊富な海の幸と石文化から生まれた郷土料理なのだ。