LOCAL FOOD CONTENTS
「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


ふわりと浮かんだ
山太郎ガニの旨味
北郷に秋を告げる
味噌仕立ての汁物
かにまき汁
『かにまき汁』は宮崎県南部の北郷町(きたごうちょう)に伝わる郷土料理。北郷町を流れる酒谷川(さかたにがわ)や広渡川で秋から冬にかけて獲れる『山太郎ガニ』(北郷町での呼称で正式名はモクズガニ。上海ガニの仲間)を使った料理だ。『山太郎ガニ』は海で生まれ、川を上って成長した後、海で産卵するために川を下る。それを狙って、漁を行うのだ。
生きた『山太郎ガニ』をよく洗った後、甲羅を外し、臼と杵、あるいはミキサーにかけて、細かく砕きつぶす。そこに、水と味噌を加えてさらに混ぜ、ザルで、きれいに濾して鍋に入れる。弱火でゆっくり熱を加えていくと、カニに含まれるタンパク質や味噌の成分などが反応し、おぼろ豆腐のように固まっていく。それを器に入れ、おろしショウガやネギを加えてできあがり。澄んだ味噌仕立ての汁に浮かぶ、ふわふわとした食感のなかに、カニの旨味が凝縮されている。ゆでて食べてもおいしいカニを、少しも無駄にせず丸ごとすりつぶすことで、濃厚な旨味が生まれるというわけだ。
味噌がカニの旨味を包み込むこと、巻くことから、その名前がついたとも言われる『かにまき汁』。その独特の味わいは、この地域の方々が秋になると待ちわびているものだ。