LOCAL FOOD CONTENTS
「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


有明海に育まれた
希少な生き物
煮付けて
濃厚な味わいの珍味に
メカジャ
6m以上という日本一の干満差を持ち、干潮時に現れる広大な干潟で知られる有明海は、ムツゴロウをはじめ珍しい名前と姿を持つ魚介の宝庫でもある。
『メカジャ(女冠者)』は有明海の砂地に棲む生き物で、正式な名前は『ミドリシャミセンガイ』。二枚貝のような姿にも見えるが、貝の仲間ではなく触手動物腕足類の一種。殻から伸びている尾のような部分は貝特有の水管ではなく、肉茎と呼ばれる器官だ。緑色をした殻を胴、肉茎を竿に見立てると“三味線”に似ている。有明海沿岸では古くから食べられている珍味だ。
肉茎の先についた砂を取り除いてきれいにした後、醤油や酒などで軽く煮付けてできあがり。煮込み過ぎると身が小さくなったりかたくなったりするので注意が必要とのこと。殻の中の身やワタ、肉茎を食べると海の香りとコクのある味わいが口の中に広がり、焼酎のつまみに最高の一品。『メカジャ』の旨味が染みだした煮汁も美味なので、身やワタと一緒に煮汁をすするように食べる。特に肉茎の中にある芯の部分はコリコリとした独特の歯応えと旨味を持ち、その部分しか食べないツウもいるそうだ。『メカジャ』の料理法として、煮付け以外には、塩ゆでにしたり、味噌汁に入れて食べることもある。