LOCAL FOOD CONTENTS
「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


博多に春を呼ぶ
喉で味わう踊り食い
シロウオ
福岡市西区・室見川(むろみがわ)。川に『梁(やな)』と呼ばれる仕掛けが現れ、シロウオ漁が始まると博多に春が訪れる。シロウオはハゼ科の1年魚、体長5cmほどで透明な美しい姿を持つ。博多湾で成魚となり、鮭と同様、産卵のため室見川へ帰ってくる。満潮で川をのぼってきたシロウオを捕らえるのが『梁漁』で、江戸時代から続く漁法と言われている。現在、福岡県でシロウオ漁が行なわれているのは室見川だけだ。ちなみに、姿や名前が似ていることから『シラウオ(シラウオ科)』と混同されることがあるが、まったく別の魚だ。
シロウオの他にはない変わった食べ方が『踊り食い』。水をはった器の中で泳ぐ生きたままのシロウオを網ですくい、ポン酢、溶いたうずらの卵などと一緒に口の中へ。口の中でピチピチと動きまわる食感がおもしろい。そのまま呑みこめばツルッとした喉越しを楽しむことができるし、噛めばザクッとした食感の後、ほろ苦さとほのかな甘みが広がる。身は淡白な味わいなので、天ぷらや佃煮にしても美味。
漁が行なわれるのは毎年2月から4月中旬までで、シロウオ料理はその間しか食べられない期間限定の味わい。春の訪れを告げるシロウオを毎年心待ちにしている方も多い。