「九州の味とともに」
守り伝えられてきた九州の郷土料理


名物『ダルム』、
肉、魚介、野菜…
様々な素材を
串に刺して塩焼きで
久留米焼きとり
筑後川が流れる広大な筑後平野の中にある久留米市。焼きとりは昭和30年代に屋台のメニューから広まったといわれている。周辺市町村との合併以前は、人口1万人あたりの焼きとり店の数が全国一であったほど焼きとり店の数が多い。久留米で愛され続ける『久留米焼きとり』の特徴は、品数の多さ。鶏、豚、牛、馬、魚介類、野菜、巻物など様々な素材の串焼きがあり、串に刺せば何でも“焼きとり”と呼ばれる。基本は素材の味を引き立てる塩焼きだが、鳥皮やつくねなどはタレ焼きにされることが多い。各店特製のタレは、創業以来継ぎ足しながら使われ続けているようだ。ホルモン系の焼きとりが多いのも『久留米焼きとり』の特徴で、医学生が名付けたというダルム (ドイツ語で腸を意味する言葉で、主に豚の腸を指す)は『久留米焼きとり』を代表する一串。ドイツ語ではないがセンポコ(牛の大動脈)も久留米ならではの呼び名で、こちらはバター焼きがよく知られる。
焼きとりの口直しとしてぴったりなのが、各店特製の醤油ベースで酸味のあるタレがかかったキャベツ。このキャベツはおかわり自由でサービスされる店がほとんどだ。焼きとり以外の一品メニューが豊富であること、大人だけでなく全世代に愛されているのも『久留米焼きとり』の特徴。焼きとりを楽しむ家族連れの姿を見ることも多い。
久留米の屋台
久留米の屋台は戦前から存在していたようだ。トンコツラーメンは久留米の屋台で生まれ、その後、九州各地に広まり各地で独自の変化を遂げたといわれている。屋台で『久留米焼きとり』がよく食べられるようになったのは昭和30年代から。高度経済成長期、久留米ではゴム産業が盛んで多くの人でにぎわっていた。日々の仕事の後、気軽に訪れたのが屋台であり、手頃な焼きとりをよく食べていた。久留米には屠殺場があり、ホルモン系の素材も手に入りやすかったようだ。今でも市内中心部に十数軒の屋台が営業しており、ラーメン、おでん、焼きとりなどを提供している。